こんにちは。救助工作車の記事を更新後、仕事が忙しくなり更新している暇がありませんでした。申し訳ありません。
さて、今回解説する救急車は、誰でも知っている車両です。火を消すポンプ車や救助作業を行う救助工作車よりも出動回数が多く、首都東京を管轄する東京消防庁では48秒に1件、救急車1台当り1日7.7件出動しているほどです。
日本における最初の救急車は1931年に大阪に配備され、それ以降傷病者を病院に運ぶ任をしています。1991年以前は、救急隊が病院に傷病者を搬送するのを主としていましたが、法律の関係上救急隊員が医師でないため医療活動を行うことはできませんでした。そのため、1分1秒を争う場合病院に着いてからでは手遅れというケースも多く、また助かっても後遺症などの社会復帰に問題があるなどの点もありました。
そこで、1991年に救急救命士法が制定され、医師の指示の下、医療処置が行えるようになりました。これ以降救急車には順次医療処置ができる設備が搭載され、それまでの2B(ベッドが2つ)型救急車の他に高規格救急車と言う分類ができました。輸液や除細動(心肺蘇生)、薬剤投与など医療処置が行えることで、救命率は上がりました。また、これまでの2B救急車も高規格用の設備を搭載したものが登場し、こちらは準高規格救急車と言う分類になっています。
ポンプ車やタンク車などは消防車を作るメーカーが車両メーカーが作った車を艤装しますが、救急車はこれらのメーカーの他に車両メーカー自身が自社の車を艤装して作っている場合があります。
ではその1では、トヨタ車両を紹介します。
・ハイメディック(HIMEDIC)
ハイメディックはトヨタ自動車が作っている高規格救急車です。1991年の救急救命士法制定直後は、日本に高規格救急車がいなかったため、ベンツやフォードの車両をベースにした救急車がいましたが、車体が大きいが故狭い道の日本には使い勝手が悪く、また気候などから車両故障もしばしばありました。そして1992年に国産高規格救急車初として登場したのがハイメディックです。
こちらが初代ハイメディックです(写真は静岡市消防局のもの。廃車済み)。100系ハイエースをベースに、屋根をかさ上げし、室内高を確保しました。またエンジンもハイエースオリジナルのものではなく、セルシオ用のV形8気筒エンジンを搭載。独特な音をするサイレンと前面に書かれたエンジン形式を示すV8が特徴でした。現在はほとんどが廃車になっており、残っている車両も予備車として配備され、他は海外に譲渡され活躍されています。
1997年にフルモデルチェンジされ、新しく登場した2代目ハイメディックです(写真は静岡市消防局のもの)。初代は高規格として設備・車両性能を重視しすぎたあまりコストがかかり、車両価格が高くなってしまったことを踏まえ、コストダウンと使いやすさ向上を目標に作られました。その2で紹介する日産パラメディックと並び全国各地に配置され、また小回りできるように日本の救急車で初の4WSを採用しました。また、後期モデルでは輝度不足で実現が難しいとされていたLED赤色灯を小糸製作所と共同制作し、視認性が大幅にアップしました。こちらも現在は予備車に降格している車両が多いですが、地方都市ではまだ現役で活躍しているところもあります。
2006年に100系ハイエースがフルモデルチェンジするのとほぼ同時期にモデルチェンジしたのが3代目ハイメディックです(写真は峡南広域行政組合消防本部のもの)。2代目の4WS機能を省き、コストダウン化及び室内の空間確保がされました。こちらも登場当時から多くの消防本部で配備され、今も第一線で活躍しています。
こちらは大月市消防本部の3代目ハイメディック。赤いラインの配置が独特で、俗称ではウルトラマンとも言われているほどらしいです。
2010年にマイナーチェンジをした3代目ハイメディック(写真は富士五湖消防本部のもの)。フロントライトやバンパーの形状が変わりました。またフロントライトもHIDにできるようオプションが追加されました。
比較写真(共に富士市消防本部のもの)。向かって左側がマイナーチェンジ後の車両、右がマイナーチェンジ前の車両です。フロントライトの形状が違うのが分かります。
・2B車両(トヨタ)
高規格とは別に、昔からある普通救急車のことを指します。高規格救急車では値段が高すぎたり、狭い道などに入る際に車両サイズが大きすぎるなどの問題から、現在でも販売されています。なお、設備機器類は高規格に準じたものであるため、医療処置は高規格救急車と同様のことが行えます。しかし、ほとんどの消防本部が高規格救急車を入れているため、現存している車両はほとんどが予備車や病院の搬送車ばかりです。
100系ハイエースを使用した2B救急車は、高規格救急車が登場する以前に多く使われていたうちの1台のため、現在残っている古いタイプの中でも多い方に分類されます(写真は湖西市消防本部のもの。廃車済み)
こちらは後期型の100系ハイエースをベースとした2B救急車(写真は富士宮市消防本部のもの)
ハイメディックが1997年に2代目に移行したのち、2B救急車もフルモデルチェンジされました。写真のトヨタレジアスエースがベースの車両は、現存している2B救急車の中でも最も多いタイプと思われます(写真は富士市消防本部のもの。廃車済み)
2006年にハイメディックがフルモデルチェンジされたのに伴い、2Bも再びモデルチェンジました。車両外観はほとんど3代目ハイメディックと同じものにされています(写真は浜松市消防局のもの)
その1は以上で終わります。その2では日産の車輌を紹介したいと思います。では